※内容に触れる箇所があります。
この映画を観たのは、高校一年生のとき。
深夜番組で放送され、タイトルに惹かれて鑑賞しました。
ある罪で服役した若い女性(パーシー)が、出所後、豊かな森に囲まれた、どこか排他的な村で、人生を再スタートさせる話です。
パーシーは、村で唯一のレストランを営むおばあさんの家に、住まわせてもらうことになります。おばあさんとの二人暮らしの始まりです。
このおばあさんがまず良いです。「パーシー」と呼ぶときの声とか。高校時代、友達が観たあと真似してました。どうやら気に入ったようです。ただ呼んでるだけなんですけど笑
頑固で不愛想なおばあさんとは、最初から上手くいきません。レストランで住み込みなのに、パーシーは真面目にやった上で、料理が下手です。
注文は何もかかってないパンケーキとか、スクランブルエッグとか、そんなものなんですけれど、それを焦がして出して、常連たちを驚かせます。でも誰も文句言いません。
店にまで来て、頼むほどのメニューじゃないと思うんですけど、村人たちは毎朝食べにやってきます。そういう村人の習慣もなんか面白いです。
料理を失敗するところとかも好きです。でっかい鉄板で、美味しいのか美味しくないのか分からない料理を作って、失敗して、雑に誤魔化して、とりあえずテーブルに持っていく。
普通出せないです。でも出すんです。そういうところも真似したくなっちゃいます。日本の飲食店ではありえませんからね。
映画って、真似したくなる場面がいろいろと出てくると思うんですけど、それがいい映画の条件にもなっているように思います。
例えばジブリも好きですが、子供の頃から真似ばかりしていました。パンと目玉焼きは、真似した人も多いのではないでしょうか。青リンゴの丸かじりとか、ランプに火を灯すとかもしましたし、魔女の宅急便では、なんでもいいから鞄につめこんで出かけたくなりました。
話を戻します。
そんな村人たちからは奇異な目で見られ、おばあさんも、パーシーのことを全く信用していない状況。
僕が彼女くらいの年齢だったら、愛想振りまいて、一生懸命働いて、信用を得ようとすると思いますが、パーシーにはそんな気は露ほどもなく、無理せず働き、悪気なく煙草を吸いながら、おばあさんの信用をいつの間にか得ていきます。
嫌われる勇気とかパーシーに伝えたら、口をへの字にしてクールに笑われそうです。
「嫌われたらどうしようなんて、生まれてから一度も考えたことないよ」とか。
マッチをポーチの柱でこすって点けるシーンがあるんですが、ここも好きです。
吸いかけの煙草を靴の裏で消して、耳にかけたり、ちょっとカッコイイです。あとでまた吸うんですよ。
ああいう細かな演出は、自然にさらっと行われすぎて、却って引き留めたくなるような、絶妙な惹きつけ方をしますね。
やっぱり彼女の演技が上手いんですね。煙草、まあ観てる方が吸いたくなるような吸い方をするんです。
服役していたときの仲間との電話のやりとりも好きです。彼女たちにしかない特別な仲間意識が、パーシーたちの計画を後押ししてくれます。
缶詰を大きな麻袋につめるシーンも好きです。この映画の要になっているんですけど、埃っぽい裏口で、カロンコトンと音を立てながら入れるところが、よく分からない欲求を掻き立てます。一体なんでしょうね笑
そしてずるずる平気で引っ張って、ドサッと置く。一応人のものなんですけど。
あと歌うシーンがあります。子守歌のようにパーシーが口ずさむんですけど、哀愁があってしっとりとしたメロディーが心に沁みて好きです。
脇役の女性が中盤で登場します。彼女は旦那に逆らえず抑圧される日々を送っています。
この人の表情や仕草もいいんです。まあ、みんな演技の上手いこと。
パーシーと仲良くなるシーンとか、段々自分の意見を主張してくるところとか、癖になります。
とても大事なキャラクターです。
その旦那は旦那で、とてもムカつくことをしてくれるので、好い意味でたまりません。実際、彼の最低な行いがなければ、この物語はラストへ向かうことは出来ないのです。
終わり方もいいですね。
最後だけ登場するキャラクターがいるんですけれど、その短い時間だけでも充分鑑賞者に余韻を残してくれます。
たまに、おすすめ映画は? と訊かれると、毎回この映画を挙げてきましたが、今のところどの人も良かったと言ってくれています。
冬の夜長には、心あたたまる良質な映画をお供に過ごすのはいかがでしょうか。
まだまだたくさん紹介したい作品があるので、今後も色々書いていきたいと思います。