ZARD第二弾として、1995年発売のアルバム「forever you」より、今回は以下の四曲について書きたいと思います。
第一弾として書いた記事もあります。

今すぐ会いに来て
坂井さんの高音が爽やかに響く一曲です。
とても意味深な終わり方をする恋愛ソングなんですけれど、僕はどうしてもポジティブなものに解釈できないのです。家庭のある相手を好きになった人の歌なのかなと、思ってしまうんですね。
土曜日の恋人とか、明日の地図を探そう、ベージュのシャツに手を振ったとか聴くと、なんとなくそうなのかなと、感じてしまいます。
何にせよ、曲調はどこか薄日がさしていて、晴れない切なさが漂い、今目の前にある恋の痛みや喜びに、とりあえず向き合っているという、真剣なようでいて、反面諦めているようでもある、そんな矛盾したメロディーが妙に心地いい一曲となっています。
♪いつもあなたは、から始まる歌いだしなんか、昔から何度も聴いているのに飽きませんけれど、サビの、坂井さんらしい声の張り方も、翳りのある色気が滲んだ表現も、このメロディーと歌詞をしっかり結びつけているように感じられて、彼女の技術の高さが窺えるポイントとなっています。
♪今すぐ会いに来てと、これほど優しく切なく歌えることもお見事ですけれど、聴き心地は不思議と楽し気で、歌詞の中に出てくる「素敵な恋人」を、どこかからかっているようなニュアンスは、坂井さんの天然な人柄とユーモアを感じとれる、貴重な一場面になっているのではないでしょうか。
好きな人にさりげなく聴かせたい一曲です。
ハイヒール脱ぎ捨てて
とても好きな曲です。
間奏部分にしても聴き入ること請け合いですが、このタイトルのセンスが何より抜群です。
僕も作品を作る身なので、タイトル付けはどうしても避けられないところですが、仮に「ハイヒール脱ぎ捨てて」というワードを発想し、タイトルとしてつけられるかと考えると、やはり根本的な部分から出来ないと思います。
女性ならではと言ってしまえば、それまでですが、やはり培ってきた感性と、センスなのでしょうね。
この歌は、過去に別れた相手のもとに、もう一度帰って来るという内容になっています。
主人公の女性は、相手の人を酷く傷つけてしまったのではないでしょうか。歌詞をよく読むと、色々な受け取り方ができるように思いますが、こうした奥行きのある物語を、数分の世界の中で語り切れる手腕には、改めて感心してしまいます。
帰って来たくなかった場所に、どうしても帰って来てしまった。
そんな、まるで切り傷が染みるような切なさがこもった一曲です。
ただ内容通りに聴く必要はなく、この悲壮的なメロディーに好きな感情をのせて聴けば、失恋の痛みも恋する臆病さも、強い意志で乗り越えていける、そんな足腰の強い曲でもあると思います。
大人の傷ついた恋心を、人けの少ない海辺でそっと潮風にさらすように、一人の大切な時間のお供に連れていくのもいい曲かもしれません。
もう逃げたりしないわ 想い出から
忘れられない恋の相手と、今の恋の相手を重ねて見てしまう、心締め付ける一曲です。
出だしから一つのドラマが広がりを見せ、見事な歌詞の組み合わせを展開しながら、胸に抱えた罪の意識を、自然の美しさを引用して描き出す。
この歌に出て来る女性の魅力は、過去の恋と向き合い、そこからしっかり卒業していくという姿勢です。
自分も他人もネガティブに傷つけず、あるがままの事実と向き合い、それを乗り越えていく人間的な強さは、簡単には手に入れられないものだと思います。
ただの理想を語る分には聴こえのいい言葉も、坂井さんの真っ正直な歌声が奏でれば、どれほど感動的に昇華するか。この曲を最後の最後まで聴き終えた時に、きっと分かることでしょう。
印象的なフレーズがそこかしこに散りばめられた一曲です。
それらを拾いながら、癒しにしても、励みにしても、満足のいく体験ができるはずです。
次の恋に臆病になっている時にこそ、聴いてほしいおすすめのナンバーです。
forever you
アルバムのタイトルにもなっている曲です。
僕個人としては、この曲のサビ、♪もう泣かないで、というフレーズが、恋に限らず、様々な側面から胸に響いてきました。
恋愛を歌った曲ではありますが、それ以上に、人に言えない何かを抱えている人の心に、親身に寄り添ってくれる、思いやりの深い曲だと感じました。
多分に感情を込めたような歌い方は、ともすると聴く側を置いて行ってしまいがちですが、この曲に関しては、♪もう泣かないで、というフレーズ一つで、作り手の伝えたかった想いを、全て伝えてくれているように思います。
時には心を揺らして聴くこともありましたけれど、押しつけがましくない空気感がとても優しい、前向きな一曲となっています。
自分一人で聴くことももちろん、大切な人に聴かせてあげるのもいいかもしれません。
永遠の何かに心奪われて、なお、そんな何かを愛し続けたい。
力強い後押しと、愛することの覚悟が、耳に染み入る名曲です。ぜひ聴いてみてください。
終わりに
このアルバムが発売されて、もう二十七年になるんですね。
いや、名曲は色褪せないとは言いますが、経年劣化を受けた歌詞カードとお酒を片手に、その言葉が生まれ落ちた意味を、ひしひしと感じています。
中々聴く機会に恵まれなくなってきてしまう、過去の名曲たち。
それはきっと星の数ほどあるのでしょう。
しかし、坂井さんを始め、曲作りに、確かに真摯に向き合って来たアーティストたちの残した思いは、どんなタイミングにしても、聴き継がれていくはずです。
好きなものを語る時は、時間を忘れるものですね。
いつか、ZARD好きな方々と、あれがいいこれがいいと語り合えたら、素敵だなぁと思いつつ、また機を見て、第三弾、四弾と、ZARDの魅力を伝えていきたいと思います。
お読みくださりありがとうございました。